第3章 緑玉髄の魂
「すみません、先ほどお電話した、武装探偵社の江戸川です」
「はい。承っております。少々お待ちください」
梶谷宝飾は大きな会社だった。受付の女性に声をかけ、待合のソファに腰かける。
映が電話したときには〝江戸川〟を名乗ったから、女性にも乱歩の姓をつかった。けれどまた、〝鏡原〟を名乗りたくなかったのも本心だった。
おそらくはカルセドニーをも扱っているだろう会社だ。ここの重役にでもなれば、収入はいったいどれくらいになるのだろう。
そんなことを考えながら、映は乱歩を見やった。メインになるのは乱歩のはずなのに、ふらふらとあちこち見ながら棒つきキャンディーをほおばっている。こちらが譲れるのはあくまでも受付への対応だけだ。せめておとなしくしていていただきたい。
「乱歩さん、いい加減おとなしくしててくださいよ」
「ねえ、映」
「……なんですか」
「あそこの天窓、なんで汚れてると思う?」
「…………は?」
乱歩が指さしたのは、吹き抜けになっている天井に、ただひとつ取りつけられた大きな天窓だった。