第3章 緑玉髄の魂
「うーん、わかった! 彼は、英鳴学園の生徒だね! 襟についてる校章が目だってるよ。そういえば、学生はそろそろ下校時刻だね……よぅし、それじゃあ、行ってみようか!」
「え、行くって、どこに?」
「決まってるじゃん! ──英鳴学園だよ」
──
かくして、映と乱歩はそろって英鳴学園の校門付近で待機していた。
鉄道に乗れない乱歩を先導してここまで来たいちばんの功労者は映なのだが。
「そろそろ、生徒たちが帰りだす時間だね」
「いますかね、あの男の子」
「いると思うよ。英鳴の校舎に裏門はなくて、下校にはこの正門をとおるしかないし。というより、確認するためにわざわざカメラ映像の拡大写真までつくったんだから、いてくれないと困るね」
「それもそうですけど……」
しばらく待っていると、ぽつりぽつりと生徒の姿がちらつきはじめた。その顔を手分けしてひとりひとり確認していく。
「あー! 見つけた!」
映が自分の作業に集中していると、急に乱歩が大声で叫んだ。その誰かを指さしたまま、乱歩は映を呼ぶ。
「あ、この子……」
「そう! いやぁ、やっと見つかったね!」
映と乱歩は、ひとりの男子生徒にかけ寄って、『ねぇ、きみ!』と不躾に声をかけた。
「な、なんですか……?」
「あぁ、そんなにおびえなくていいよ! 少し訊きたいことがあるだけだからね」
おびえたように……いや、不審げに体を縮こまらせる男の子に、今度は映が話しかける。
「大丈夫、怖がらなくていいわ。わたしたちは、武装探偵社の人間なの。きみ、きのう、うちの社の郵便受けに手紙を投函したわよね」
「え、あ、はい。……あの、それが、なにか?」
「その手紙、誰に頼まれて投函したの?」
「あの封筒、なんか変なもの入ってたんですか?」
どうやらこの男児はほんとうになにも知らないようだ。きょとんとした瞳がすべてを物語っている。