第3章 緑玉髄の魂
「まず第一に、この手紙からわかることだけどさ。これはパソコンで文字を入力したあと、プリンターで印刷されたものだ。筆跡からはなにもわからない。犯人は、──あの使用人は、慎重かつ狡猾な人物だったから、指紋を残すようなヘマはしないはずだ」
──これだけじゃあ、なにもわからないわよね……。
「でも、よく見て。封筒のはしに、わずかだけどなにかでこすれたような跡がある。おそらくこれは、金属、たぶん鉄屑だ」
「犯人の居場所ってことですか?」
「いいや。犯人がここまで見越しているとするならば、その判断はまだ早い。犯人は僕たちを、──この名探偵である僕を試している」
──やっぱりこのひと、面倒な子どもみたい。
「この手紙に消印は捺されていない。となると、犯人は社のポストに直接入れたことになる。うちは探偵社だ。つまり、防犯カメラが設置してある!」
「犯人が映っていない可能性は?」
「そんなの、見てみないとわかんないよ!」
──どうにも行き当たりばったりだけれど……。信用すると決めたのはわたしよね。