第26章 眼帯の下【元親】
「綺麗な夕陽色、かな」
「…は?」
冴の言葉に、元親は思わず間の抜けた声を漏らした。そんな彼の様子を気にする間もないまま冴は続ける。
「右目は青空と海、左目は夕陽。元親に合ってて、綺麗だと思う」
「…どうやったらそんな…いや、いい」
考え方が、ときこうとして止めた。言うだけ無駄だ。それが冴(こいつ)だ。
「ねぇ、また時々見せてね。辛くなければでいいから」
「まぁ、いいけどよ」
誰かが言っていた。この左目は、血の色だと。生まれた時から朱に染まっているこの目を、鬼の目だと。確かに〝鬼〟と呼ばれているし、自分でも〝鬼〟と称している。だが、この左目を鬼の目以外で例えられたのは、両親以外では初めてだった。元親は、こんな目でも悪くはないのかもしれないなと心中で呟き、冴の頭を少々乱暴に撫ぜた。
「な、何?」
「…いや、なんでもねぇよ」
「?」
ありがとう。
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D.Gray-man ラビ
お題配布元:はちみつトースト 様
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