第24章 相手の死か 己の死か 【政宗・慶次】
「もし、自分か対峙してる相手が死ななきゃいけなかったらどうする?」
不意に出された問いかけに、その場にいた者たちは目を瞬かせた。
「慶次…たらればの話はこの戦乱の世にゃ意味無いぜ?」
「けど政宗は俺を迎え入れてくれてるだろ?」
「お前は冴のダチだし、戦人じゃねぇ」
言って政宗がお猪口を煽る。ごくりと喉がなった後に、慶次がまた口を開いた。
「だからさ、その冴が対峙してたら、どうする?」
「ありえねぇ」
「例えばの話だって」
本人でも無いのに政宗がきっぱりと一蹴するが、慶次はどうしてもききたいらしい。ここでまた意味が無いと言うとキリがないので、政宗ははぁとため息をついた。
「……俺か冴が死ぬしかないならどっちを選ぶか、だったな。俺は、死ぬわけにはいかねぇ」
「…」
黙ってきいていた冴はその答えに軽く目を細めつつお猪口の酒を口にした。正しい答えだ。政宗は一国の主。民の為にも簡単に死ぬわけにはいかない。ならば自分が死ぬということとなっているのに、冴は安堵していた。しかし次の言葉で政宗に不満を抱くことになる。
「だが、冴も死なせねぇ」
「「…はぁ?」」
政宗の的外れな答えに冴も慶次も怪訝な顔で彼を見た。当の本人は、してやったりと胸を張ってまたお猪口を煽っている。
「あのさぁ政宗、どっちかって言ったよね?」
「言った。だが俺はどっちもごめんだ」
「答えになってないから…」
慶次がため息をついてがくりと肩を落とす。冴も呆れてひとつ息をついた。
「俺が死ねねぇのは大事なモンのためだ。その中には当然冴も入ってんだから、間違いじゃねぇだろうが。You see?」
なんという屁理屈な答えだ。こんな性格でなければ国主なんてできないのだろうか。冴は思わず自国の主を浮かべたが、あいつも我が強いほうだった。