第23章 初恋のけじめ【浅井長政・お市】
お市はそのまましばらく簪を見つめていた。そこで、おもむろに長政が簪をお市の手からとり、一瞬躊躇った後、そっと彼女髪に挿した。
「………」
「………長政様」
「………」
「ありがとう…」
「…あぁ」
似合ってる、の一言は出ないのかなと冴は思ったが、その表情をみれば明らかで、仕方がないなぁと苦笑した。束の間見つめあっていた二人だが、不意にお市が冴の方を向いた。
「冴も、ありがとう…」
「どういたしまして、市」
冴が軽く目を瞬いてから返すと、お市もまた軽く目を瞠った。そして二人で微笑いあったのだった。
「ところで長政、けじめって結局なんだったの?」
「それは、その…」
「けじめ?」
「うん。長政、私が市への贈り物を選ぶのは自分のけじめでもあるって言って」
「……長政様、昔、冴のことが好きだったのね」
「へ?」
「市!!」
突然の爆弾発言に、冴はしばらく長政を凝視していたのだった。