• テキストサイズ

不羈奔放【戦国BASARA】

第21章 「子どもだって容赦はしない」【森蘭丸】





それは、なんとなく気分を変えて尾張の方を通った時に起きた。ごく普通の街道だと思われる道のど真ん中に、偉そうに腕組みをして立っている子どもがいた。冴は不思議に思い首を傾げたが、避けて通ればいいかとそのまま歩を進めた。近づくにつれて子どもの容姿がわかってくる。着物は紫で、少々上物。そこらの村の子どもではないだろう。前髪を紐で結んでおり、その背には、これもなかなか上質の弓。年の頃は14、15といったところだろう。
「そこのお前、止まれ!」
子どもが怒鳴り上げる。が、冴は構わず進む。すると子どもがむっと顔を歪めた。
「止まれって…言ってるだろ!!」
子どもが弓を引き、放った。矢は冴のすぐ近くを疾り抜け、地に突き刺さる。冴はそれを見送った後、子どもに鋭い目を向けた。
「突然矢を放つなんて、宣戦布告してるようなもんだよね。子どもだって、容赦しないよ?」
彩輝を少し遠ざけ、腰のそれに手を添える。
「お、お前が止まらないのが悪いんだろ!?何なんだよお前!信長様の敵か!?」
「…信長?」
冴の表情がみるみるうちに心底嫌そうなものに変わる。
「あんた、織田軍?」
「森蘭丸だ!お前、信長様の敵か味方かどっちなんだよ!!」
「森蘭丸…『小鬼』か」
正直、織田軍はどうでもいいと思っていた。関わることは無いだろうと。それが、偶々帰り道を尾張方面にして、偶々織田信長の部下に出くわすとは。
「ついてない…」
「蘭丸を…無視するなぁっ!!」
「!?」
力強く放たれた矢は、先ほどの牽制とは違い、紫の光を帯びていた。咄嗟に避け、跡を見る。地面は黒く焦げていた。
(この子ども、婆娑羅者…)
紫の雷が蘭丸の周りで小さくバチバチと唸っている。
「…やっぱり容赦するわけにはいかない様だね」
スッと冴の腰から二対の刀が抜かれる。右手に刀を、左手に小太刀を。
「悪餓鬼には、お仕置きだ」
冴が、駆けた。

/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp