第16章 「嘘臭い笑顔をありがとう」【猿飛佐助・真田幸村】↑後
団子のお礼を、と連れて来られたのは、やはり上田城だった。ただしお忍びだったのか、入ったのは正門ではなく裏口。待ち構えているように立っていた人物を見て、冴は目を丸くした。
「お帰りなさいませ、幸村様」
「おぉ、小介!すまなかったな」
「いえいえ。お役目ですから」
並ぶ二人は瓜二つと言っても過言では無い位よく似ている。
「ところで幸村様、そちらの方は?」
「この方は…」
そこでぴたりと幸村の動きが止まる。冴は軽く首を傾げたが、はた、と気付く。
「ごめん、そういえば名乗ってなかったね。私は高瀬冴。いろいろ、旅してるとこ」
「冴、殿・・・。小介、この方は某を助けて下さったのだ。丁重にな」
「御意」
「助けたって、そんな大げさな…」
冴はもう呆れるしかなかった。だが幸村は必死に弁解する。
「そのようなことはござらぬ!冴殿は某に団子を分けてくださり、某を空腹から救ってくれたでござる!」
「どっか行ったと思ったら、やっぱりまーた城下に行ってたんだ?旦那」
「さ、佐助…」
(ん?この声…)
どこからともなく声がし、音も無く幸村の傍に影が落ちる。冴はこの声をどこかで聞いた気がした。
「おや佐助、お帰りなさい」
「小介ぇ。だめだろー、旦那を甘やかしちゃあ」
「主の命とあらば、ね」
「あのなぁ…」
もしかして、と思いながら冴は佐助を凝視している。佐助はその視線に応えるように冴を見返した。