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不羈奔放【戦国BASARA】

第13章 約束の地へ【伊達政宗】


言って彼女は丘の方を向き、懐から、首から下げた〝それ〟を取り出した。
「それは…!!?」
政宗が〝それ〟を見て反応するが、彼女は気づかぬまま〝その笛〟を吹いた。ここが戦場だったのが嘘のように澄んだ音が辺りに響く。誰もが黙って事の成り行きを見守った。しばし後、丘の上から一頭の馬が駆け下りてきた。彼女はその馬を優しい笑みで迎え、その首を撫でる。政宗は呆然としているが、なぜか頭の中では冷静に記憶を掘り返していた。真っ直ぐな瞳。その優しい笑みの面影。額の小さな刀傷。そして、首から下げた小さな笛。
「まさかお前…冴、か…?」
彼女の動きがぴたりと止まり、成実の、小十郎の、黙って見守っていた伊達軍の視線が政宗に集中する。彼女は数秒固まっていたが、やがて軽く俯いて小さく笑いをこぼした。そして。
「まったく…気づくのが遅いよ、梵天丸」
呆れたように、苦笑混じりに、だが嬉しそうに、冴は微笑んだのだった。








どちらからともなく、二人の距離が縮まる。敵軍はいつの間にか撤退していたが、今の彼らにはどうでもいいことだった。
「約束を、果たしに来た」
先ほどと同じ言葉。だが今度は、すんなり内に広がって行った。
「あぁ」
「…って、それだけ?」
「他に言う事があるか?」
「…無いね」
「だろ?」
政宗が、冴が、笑った。






約束を、果たしに来ました。幼い時に交わした、必ずまた会いに来るという約束を。あなたの元へ―――













奥州への道中。
「でもさ、梵酷いよなー。冴だってわからないなんてさ」
「そのとおりですぞ、政宗様」
「約束忘れてるかもとは思ったけど、まさか存在忘れられてるとは思ってなかったよ」
「Ah?忘れてなんかいねぇよ。ただな…」
三者三様の言い様に政宗が反論する。と、政宗が冴の顎をくいと持ち上げた。
「こんないい女になってやがったからわからなかっただけだ」
「は…い…?」
「覚悟しろよ?you see?」






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お題配布元:はちみつトースト 様
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