第13章 約束の地へ【伊達政宗】
「ぜったい、ぜったいまたあいにくるから!」
約束を果たしに、彼の地へ―――
そう遠くないところから喧騒が聞こえてくる。言うまでもなく、戦だ。こちらまで来なければいいが。軽く息をつき、高瀬冴は愛馬・彩輝の首を撫でる。進み行くのは北への道。昔交わした約束を果たすために。向こうは覚えていないかもしれない。ただの自己満足になるかもしれない。それでもわずかな期待と希望を胸に、冴は歩を進めた。物思いにふけりながら歩いていると、ふと、喧騒が大きくなったことに気づいた。ここは高台になっていて丁度戦場がよく見える。目によく映り込むのは、鮮やかな蒼。どうやら蒼い軍勢が圧しているようだ。冴は、蒼い軍勢のその、先陣を切っている人物を目にし、そして一瞬、世界が止まった。遠目だが、武装で分かり難いが、昔の面影なんて有るような無いような面構えになっているが。だがあれは、間違えようもない、疑いようもない。
「…ッ!!」
冴は自分の中の何かが高まるのを感じた。自然と口角が動く。彩輝から降りて、そっと声をかける。
「いつものように、ね?」
首から下げるそれを軽く掲げて見せると、彩輝はひとついなないて冴から離れた。
「…今、行くよ」
約束を果たすため、冴はその喧騒の中へと飛び込んだ。