第1章 初めてのおともだち【松寿丸】
「じゃあ、ないていいよ!」
「…え?」
冴の手を頭に乗せたまま、松寿丸が顔を上げる。冴は、微笑っていた。
「とうさまがね、『なくときは、ひとりじゃなくて、だれかのそばでなきなさい。そばでなけるひとをさがしなさい』って!よく、わかんないけど」
それは松寿丸にもよくわからなかった。だが、なぜだか冴の手の温もりがとても温かくて、懐かしくて、いつのまにか、その両目からは涙がこぼれ出していた。
こんな小さな手、知らないはずなのに。
「冴も、かあさまがいなくなっちゃったら、かなしくて、ないちゃうよ……かあさまぁ」
母がいなくなることを想像したのか、冴もまた、涙をこぼしていた。小さな嗚咽が部屋に響く。2人はしばらくの間、静かに泣いていた。
そして。
弘元と真暁が戻った時、2人は仲良く寝息を立てていたという。
2人がお互いを必要とし、友となった日。
約10年後、それが少し変わるのは、まだ知る由もない事。
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戯言&人間シリーズ 001~050
お題配布元:はちみつトースト 様
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