第9章 ひまわりの笑顔【猿夜叉丸】
しばらくして戻って来た猿夜叉丸の手には小さな箱があった。それを冴に手渡す。
「これ、は?」
「…べ、別に私ではないからな!父上が、せっかくだから贈り物の一つでもしろと言うから、仕方なく…!断じて、私が提案したのではないからな…!」
何も訊いていないのに言い立てる猿夜叉丸に小首を傾げた後、冴は蓋に手を添えた。
「開けていい?」
「…あぁ」
そっと開ける。中には、小さく花の装飾が施されているかんざしが入っていた。その花は、偶然にも先ほど猿夜叉丸が思った、太陽の花だった。
「わぁ…これ、猿夜叉丸が選んでくれたの?」
「わっ、私は、父上が候補として出した中からこれがいいかと選んだだけで…」
最後の方はごにょごにょと聞き取れなくなっていったが、冴は気にしなかった。
「ありがとう、猿夜叉丸」
冴はそのかんざしを手に取り、自分の髪にそっと挿した。
「似合うかな?」
「…あぁ。まるで…向日葵のようだ…」
大した着物でも、綺麗な飾りをつけているわけでもない。あるのは今もらったかんざしと、その笑顔だけだ。それでも猿夜叉丸には、冴が輝いて見えた。
猿夜叉丸の、淡い初恋。
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お題配布元:はちみつトースト 様
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