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不羈奔放【戦国BASARA】

第7章 君と出会って私の世界が動き始めた【弥三郎】




それが途切れたのは、真暁が冴を探しに来た時だった。
「冴、こんなところに…弥三郎様!?」
「やさぶろう…?」
真暁があげた名を問いがちに呟いて隣を見ると、呼ばれた本人はびくりと震えた。
「弥三郎って、男の子の名前だよね?」
「…ごめん」
その謝罪はあまりに小さく、言った本人以外には聞こえていなかった。
「冴、弥三郎様に遊んでいただいていたのか?」
「はい」
「弥三郎様、申し訳ありません。ありがとうございます」
弥三郎はふるふると首を振っただけだった。
「そろそろ夕餉だから、早く戻って来るんだよ?弥三郎様にご迷惑かけないようにな」
「はい」
真暁が言ってしばらくたった頃、今度ははっきりと、弥三郎は言った。
「だますつもりじゃなかったんだ。ただ、言い出せなくて…ごめん」
弥三郎がどんどん俯いていく。だが、それに反して冴の顔は明るかった。
「どうして謝るの?」
「え…?」
弥三郎が驚いて顔を上げる。
「だって弥三郎は、自分の事男だとも女だとも言ってないよ?だましてなんかない」
「で、でも…」
みるみるうちに弥三郎が顔がまた下に落ちて行く。
「男なのに、こんな、女の格好して…」
「そういえば、なんで?」
「…きいて、ないの?」
冴は「何を?」ときくように首を傾げる。すると、弥三郎が下を向いたままぽつりと話し始めた。
「…おれ、まわりから、『姫若子』って呼ばれてるんだ」
「ひめわこ?」
冴が繰り返すと弥三郎がこくりと頷いた。
「おれ、戦いとか、嫌で、武術の稽古とかもしたくないから、こうやって、女の格好して、部屋で遊んで…」
弥三郎が下を向いたまま話すのを、冴は黙って聞いていた。
「長曾我部の嫡男が、女の格好して部屋遊びなんて…って。それで、おれのこと陰で姫若子って呼んでるんだ」
弥三郎が言い切る。しばしの沈黙が流れた。
「…」
「…」
沈黙に耐えきれなくなって、弥三郎が冴に目を向けようとした時。
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