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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第7章 サーカス






「いやあ、中也と一緒の任務だなんて、どきどきしちゃうなあ」

「手前はいつもいつも……、少しは分別をわきまえろ」

「あはは、わかってるよ。──さぁて、行きますか」



綴と中也は、森の命で探偵社の潜伏する晩香堂へと向かっていた。綴にとって森の命令を素直に受け入れるというのは大変不服であるのだが、中也を引き合いに出されて断る選択肢はなかった。

不機嫌と上機嫌の間で揺れる綴は傍から見ればずいぶんな情緒不安定なのだが、あいにくといまここには綴自身と中也しかおらず、探偵社が仕掛けたであろう監視カメラも綴がハッキングで停止させたので誰も見てはいない。
ただひとつ正面を向けて設置されているカメラだけは停止させていないため、綴と中也を捉えてランプを点滅させていた。



「探偵社の警戒態勢として、カメラだけッてのはねえよな?」

「うーん……、あ、あそことあそこ、銃座があるね。でも中也にはあんなの、赤子の打撃より効果がないよね」

「当たり前だ。舐めてンのか?」




いつものように軽口を叩き合うふたりは、余裕たっぷりに笑った。だがしかし、こんなこと、四方から飛んでくる銃弾のさなかでは、まったくとしてありえないことである。中也の異能力で銃弾のすべてを跳ね返し、こんなものは何でもないとでも言うように、ふたりはただそこに立っていた。




「特使の摂待役がこんな木偶とは 泣かせる人手不足じゃねえか 探偵社。生きてる奴が出て来いよ」






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