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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第7章 サーカス






綴がその背中を見据える中、ふたりは足音を立てながら階下へと降りていく。綴はいまだ笑っていた。そんな綴の異端が不気味で、恐ろしくて、ホーソーンは彼女の理由を考えていた。綴がなぜこうしてやって来たのか、それは本来森の脅迫でしかないのだけれど、そんな内部の事情を外部のホーソーンが知る由もない。





──我々の戦いを攪乱するためか? いいや、彼女なら、もっと賢くやるだろう。

──あの言葉の意味はなんだ?

──彼女はマフィアの狗になったつもりはないと言った。それは嘘か、真か?

──駄目だ。我々には、彼女の存在すら肯定するすべがない。




そのとき、階段の下に見知った人影。ミッチェルはなにも知らなかった。知っていたのは綴だけ。ホーソーンでさえも、気配を察するのが遅れてしまった。それほどまでに、〝仲間〟の登場は安堵をもたらした。



「貴方は確か上級秘書官の。マフィアにやられたと聞いたけど 生きてたの」

「──ミッチェル!」



〝それ〟は屍体であった。その眼はなにも見ていない。ただ、虚ろに開かれているだけ。もはや熱を持たない、重い肢体を吊り下げている細い糸の存在に気づいたのは、ホーソーンだけ。ミッチェルは目を見開き、屍体はただそこに在った。




───


爆発音を、綴は遠くで聞いていた。屍体に檸檬爆弾を詰めたのは綴だ。大した理由はない。ただ、作戦のこれからを考えれば、〝この程度〟で済ませておく必要があったから。







──だから言ったのに。



──いろいろと考えすぎる男は好まれないよ。



──ねえ、ナサニエル・ホーソーン。





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