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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第7章 サーカス






「科学こそ 神の創造せしこの宇宙を理解する唯一の言語だよ?」



爆発に伴う煙の中から、焦げた衣類を纏った梶井が姿を現す。唇から漏れ出す数式。肩に負ったAの血文字。募るいらだち。降ってくる檸檬爆弾。


──逃げ惑う者たち。




「うはははははは! ははははははは!!」

「ちょっと梶井! まだわたしがいるのに〝それ〟投げるって頭おかしいんじゃないの!?」

「青空幹部ともあろうお方が避けきれないはずがない!」

「わたしが避けられないわけないでしょ! こんなの、少し計算できれば稚児だってできる!」




綴と梶井の会話を、組合員が茫然と見つめている。それもそのはず。ふたりの会話はそのくらい高度で、天才的で、なおかつ異端だった。



「ああ、もう! 梶井はそっち頼んだからね!!」

「了解いたしましたあああ!!!」



船から着場にひょいと跳び移り、綴は組合の眼鏡男に声をかける。名前はたしか──ナサニエル・ホーソーン。



「──貴女はなぜ、降り注ぐ爆弾の中であんなにも冷静でいられるのですか!?」

「──職人<フェロークラフト>、ナサニエル・ホーソーン」

「!?」

「あは、ねえ、予測演算って、知ってる?」



ホーソーンが目を見開く。綴が大きく笑った。それはまるで、恍惚、愉悦、悦楽のような。妖しい、とても齢22には見えない顔をしていた。



「何なのよ こいつら!? 単身で前線基地を落とす異能者なんて、爆発を予測演算でかわす女なんて、聞いた事ないわよ!」

「──いいえ。こちらの女性は存じています。ポートマフィアに収まるにはもったいないほどの、そう、〝史上最高の情報屋〟──そうでしょう?」

「あはは! そんなに褒めてもらえるなんて照れちゃうなあ。そのとおりだよ、わたしは報酬次第でどんな情報も売る。きみたちも取引する? わたし、ポートマフィアの狗になったつもりはさらさらないからね」



ポートマフィアに所属する者は、みな首領に忠誠を誓っている。それを真正面から否定する綴を、誰もが異端と言った。



「言っておくけど、わたし、いますこぶる機嫌が悪いんだよね。普段は戦闘なんて野蛮なことはしないんだけど──二、三発殴らせてよ」



にこり、笑った綴に、背筋が凍った。




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