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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第7章 サーカス






「おやおや、今日は任務に人手が入るとは聞いていましたが、まさか青空幹部とは!」




爆音の音楽のすき間から漏れ聞こえた梶井の声に、綴はため息をひとつついて耳からイヤホンを引き抜いた。携帯端末を操作して旋律を止める。
綴は別に音楽が好きなわけではない。ただ、聞きたくなくても聴こえてきてしまう不特定多数の声よりマシなだけだ。綴にとって音楽は暇潰しでも何でもなく、ただの耳栓にすぎない。それも、あまりに無力な。




「梶井は朝からうるさ……元気だね。それじゃあさっさと行こうか」

「さすがは天才! 作戦内容を聞かずとも判るなんて!」





──うるさい。ああ、うるさい。




これではわざわざ言い直した意味もない、とまたひとつため息を吐き出す。
梶井のテンションはいつ何時も変わらず高いままだ。その底抜けに明るい性格に救われたこともあるけれど、大体は煩わしいだけだ。とくに、馬鹿に機嫌が悪いときは。煽っているようにしか聞こえない。




「作戦内容は森さんからある程度聞いてるだけ。打ち合わせの必要はないよ。わたしが合わせるから、好きにやって。あぁ、言っとくけど──わたし、怪我するつもりはまったくないよ」




いやな予感は的中し、森から無茶とも思える作戦を振られた。けれど森ができると言うのだから綴にやり遂げられないもののはずがない。けれど、それにしたって無茶振りがすぎる。




──森さん、報酬はいつも以上にぶん取るからね。






綴のささくれだった雰囲気を感じとったのか、梶井はそれ以上なにも言わなかった。





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