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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第6章 骨






『月下獣』と『羅生門』が交錯する。ここまでの闘いを見たのは久しぶりだった。もともと戦闘は苦手だが、四年前のあの日から、たとえ映像で見るのも避けていた。そうでもしなければ、綴の脳裡に焼き付いた屍体の山が甦るような気がして。

圧倒的に本能で闘っていた。考えて行動しているような気配は一切ないし、そんな暇もないほど苛烈な闘いだった。




『その程度か 人虎』

『くっ……』

『嬲る趣味はない。一撃で首を落として遣ろう』



敦の絶望が目に見えるようだった。綴はその立場のおかげでそれを向けられたことはないが、羅生門はとにかく威力がすごい。その衝撃を知っている身からすれば、絶対に受けたくない。



『呪うならば己が惰弱さを呪え。貴様は探偵社という武装組織に属した故に自らも強いと錯覚しただけの弱者。その探偵社へも偶然と幸運で属しただけだ』

『今日は随分よく喋るな』

『……無口だと申告した憶えは無いが』



芥川の虚ろな目を、綴はいったいいつからまともに見ていないだろう。突き放してしまったあの日、まっすぐに見つめ返すことができなくて、それ以来視線を合わせることはなかった。ただ、射抜くような眼に、責められているような錯覚を憶えて。




『……お前の云う通りだ。僕は弱い。



でもひとつだけ長所がある』

『何だ』

『お前を倒せる──!』




そこから先はよく憶えていない。いや、憶えてはいるのだけど、霞がかって思い出すのも億劫だ。

瞳に膜を作っていた涙がついに零れ落ちる。嗚呼、なんと憐れなことだろう! 芥川だって、決して最初から悪だったわけでもないのに。すべては、元兇である憎きあいつのせいなのに!



気づけば鏡花が倒れた敦を連れて脱出したところだった。『この大馬鹿野郎!』という国木田の声も虚しくこだまするだけ。綴を叩き起こすような効力は持っていない。



『よくやったぞ!』



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