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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第6章 骨







『鏡花 其れがお前の選んだ道か』



綴は目を閉じ、脳内で再生され続ける映像を凝視していた。もう、さっきまでの動揺も慟哭も影に隠れている。

綴にはわかっていた。鏡花が死なないことが。芥川が鏡花を殺してしまわないことが。

いわば、敦の弱さに救われんとしている。敦の心の弱さに。敦の過去の叫びに。苦しみに、悲しみに、恐怖に、痛みに、──涙に。



『是迄の労に酬い 楽に殺してやろう』



芥川は命の感覚に鈍い。異能で人間の身体を引き裂くたび、同時に命を切り裂いているのだということを理解していない。けれどそれはポートマフィアという黒い社会で生きるうえでは至極まともなことだった。綴のような痛みに敏感な人間の方が少ない。稀少種である。闇の中で生きるには、綴の性格はあまりに不憫だった。



『死ね』



そのとき。衝撃音とともに空振った芥川の異能がすでに沈みかけた船に亀裂を入れた。──敦が、獣化した腕で鏡花をかばい、そこに立っていた。



──太宰の予測は、わたしをも越えてくる。



──ねえ、太宰。



──孤独を埋めるものは、そこにあった?




『今と成っては 奇異なる事だが──



──貴様とは孰れこう成る気がしていた』




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