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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第6章 骨






気に入りのライダースジャケットが、いまはただ冷たかった。最近〝ここぞ〟というときが多い。そのうちのひとつでも気に止めない冷酷さがあれば。そうであれば、こんなにも綴は心をすり減らしていない。


用意させた車に乗り込み、行き先を告げる。そこは港だ。

ポートマフィアの管轄内でいちばん大きな港。密輸船も組織のものだ。動かしているのはおそらく芥川。鏡花とともにいた人虎を閉じ込め、そのまま海外に売り渡す気だ。



──お願い、間に合って……!



綴は胸元で手を合わせ、祈った。フラッシュバックする記憶と頭痛。〝アンタに生きる価値はない〟と吐き捨てた女。

ごめんなさい、と綴は呟いた。涙が流れ落ちてはスカートに染みをつくる。ごめんなさい、また呟いてかぶりを振る。



「幹部、着きました」

「あぁ、ありがとう。帰っていいよ」

「お帰りは?」

「気にしなくていい。自力で帰るよ」

「了解しました」



綴はいまできる最大限の笑顔を貼りつけて車を見送った。くるりと進行方向を変え、脳内でライヴ映像を映し出しながら歩き出した。




──わたしには責任がある。



──鏡花に、光を教えた責任が。



──だからわたしは鏡花を救う。



──救って、責任を果たす。





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