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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第6章 骨






ピリピリと張り詰めた空気を纏って、綴は地下へと続くエレベーターに乗り込んだ。そのあまりの気迫に、構成員たちは声をかけられずにいる。



──いけない、笑顔を忘れてた。



綴は取り繕うように口角を上げた。笑顔は綴の仮面だ。誰をも懐柔する魔法の技術。



──あれしきのことであそこまで腹が立つなんて。



もう太宰はいないのに、そう嘆息する。もう四年も前のことだ。構成員の中には〝太宰治〟を知らない者の方が多い。さっきの下級構成員だってそうだ。綴の記憶では、彼は二年前から組織にいる。きっとそのふたつ名の本当の意味すらわかっていない。




──だめだめ、なんでまたあいつのことを思い出さなきゃならないの。




──朝から気分が冴えないのは、なにも別離のせいだけじゃないみたい。




四年前の別離にはサイダーだった。けれど綴ももう二十二になる。発泡酒もワインもウイスキーも嗜むようになった。自分が辛党であったことをハタチの誕生日にはじめて知ったくらいだ。




──今晩は中也に、鏡花の門出祝い、つき合ってもらおうかなぁ。




──なんて、ただの自棄酒か。




──そういえば、わたしに会いたがる捕虜なんてはじめてだなあ。




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