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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第6章 骨






破綻者には破綻者なりの理論がある。
破綻者には破綻者なりの理屈がある。
破綻者には破綻者なりの道理がある。


実験室レヴェルではわからないことを、梶井はもっと大きな舞台でたしかめているのだ。そうしているうちにそれは大きな事件に発展し、何人もの死者を出した。そしていまでは爆弾魔として名をはせている。


『死ぬ』ということとはなにか?
なぜ命には終わりがあるのか?
科学の究極とはすなわち『神』と『死』であるはずなのに、なぜひとは生きるのか?


梶井の永遠の命題である。けれど綴は、それは梶井には本当に死んでも理解できない事柄だと思っていた。そんなことにこだわっている時点で駄目なのだ。

なぜひとは死ぬのか。それを理解しようとするならば、一度自分が死んでみるくらいの気概を見せてくれなくては。〝死んでしまっては終わりだ〟と、そう思っている時点で梶井は〝天才〟にはなりえない。




──本当の意味での理解なんて、しない方が幸せなのに。




「モルモットが足りているか? 足りているわけがない! 僕の実験は半永久的に続くのです! サンプルは多い方がいいに決まっている!」

「だよねだよねぇ。それでなんだけど、──




──移動する実験室とか、興味ない?」



梶井の眼が輝くのがわかった。





──

「青空幹部殿は天才です! それなのになぜ──理解を求めない?」

「追求なんて野暮だよ。ひとたび理解してしまえば〝答え〟を手に入れると同時に〝興味〟を失ってしまう。わたしは〝答え〟より〝興味〟の方が大事なだけだよ」

「僕にはそれこそが理解不能! 青空幹部殿のその異能力をもってすれば実験ももっと鮮やかになるというのに!」

「あはは、理解なんてしなくていいよ。わたしのことなんて、わたしにもわかってないんだから。この異能力があるせいでさ──」



梶井が不思議そうに首をかしげた。

あぁ、と綴はセンチメンタルな気分に陥る。いわく、自分が〝死んだ〟とき、その〝死〟さえも梶井の実験サンプルになってしまうのか、と。




──それもいいかもしれないなぁ。



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