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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第5章 秋日狂乱






ひととおり見回したところで谷崎に視線を戻した。更なる襲撃を予想しているのだろう。谷崎の顔からは警戒の色が消えない。



「いやだなぁ、そんなに怯えないで。今日は挨拶に来ただけだから。

はじめまして、武装探偵社の皆さん。わたしはポートマフィア幹部がひとり、青空綴。でも戦闘は出来ないし、見ての通り武器も持ってないよ。だから安心して」




事務所内に緊張が張り詰めたのがわかった。そんなに意外なものだろうか、と綴は瞠目する。



「あはは、本当になにも持ってないよ。この襲撃だって、わたしは止めたんだから。それなのに突っ走っちゃったんだから、うちの部下がごめんね」

「い、いや……。おい谷崎。こんな餓鬼が幹部なのか?」

「ボクも詳しくは……」

「ひそひそ話はやめにしようよ」



綴はにこりと笑んだ。その笑顔に狂気じみたものを感じて、国木田は眉間のしわを深くした。



「妹さんはもう平気?」

「あ、ハイ」

「それならよかった! ……ああそうだ、今日は挨拶しに来たんだったね。ええと──




──わたしとしては、探偵社とは争いたくない。いや、争ったとしても、あんまり興味ないんだよね。とりあえず、ひとつだけ忠告をしに来たの」

「忠告?」

「人虎──中島敦に懸賞金を懸けたのは相当な凄腕だよ。気をつけた方がいい。探偵社に引き入れた以上、責任は持つんだよね?」



最後ににっこりとひときわ大きく笑って、綴は扉の向こうに消えた。社員がぽかんとあっけにとられている隙に。



「なんだったんだ、いまのは……」

「さァ……」




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