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【文スト】青空の憂鬱、記憶の残響【中原中也】

第3章 間奏曲






その日、綴は森の執務室を訪れていた。
それは中也を傷つけんとしている森に自分の考えを伝えるためであり、あわよくば森を止めることができればと綴は思っていた。

できることなら中也も森も傷つけたくない。綴にとって想いびとも育ての親も同様に大切だった。






「綴くん、いったいなんの用かね?」

「決まってるじゃない。中也のことだよ。わかってるくせに」



綴はせせら笑った。ほんとうは、ほんものの親子のように笑い合える関係であるはずだった。なぜ、こんなにもいま、自分は嘲るように笑んでいるのか。綴には世界の理がわからないままだった。




「ねぇ、森さん。なにをそんなに焦ってるの? 太宰がいなくなってもう四年も経つのに、急にわたしを幹部にしなければならなかった理由はなに?」

「……組合<ギルド>という組織を、知っているかい?」



唐突に森は言った。その顔には先ほどまでのような笑みはない。真剣な話をしに来たはずなのに、これからなにを話されるのか、その内容を聞くのが怖かった。




「知らない。その組織がなにか関わっているの?」

「組合とは海外の異能組織なのだが、近頃急激に力を持ちはじめたようでね。その組織が、いまこのヨコハマにいるらしい」












──そうか。



綴はさっき自分で問うた質問の答えに思いいたった。

森は怖いのだ。太宰がいなくなったいま、この組織に完全なる黒は森自身しかいない。厳密に言えば、構成員の大半を信じられなくなっている。

ただでさえ未知な海外異能組織と対峙するのだから、戦力になるのはもはや信頼しかない。綴と中也を幹部に迎えた新体制の組織で、未知なる組織を迎撃しようというのだ。

悲しいかな、綴には森の気持ちがよくわかった。







──このひとはすべてをわかってるんだ。わたしが森さんの気持ちを最大限理解できるとわかったうえで、情にうったえようとしてる。















──ほんと、とことんずるいひと。



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