第9章 家出
安「はい、ここに座って下さいね」
バスチェアーに座らされて
お湯かけますよと
シャワーのお湯を頭からゆっくりとかけられた
そのままあれよあれよと言う間に
雨に濡れた髪を綺麗に洗ってくれる
安「はい、次体洗いますね」
タオルにボディソープを付けて
くしゅくしゅと泡だてながら
楽しそうな安室さん
『か、体洗うのは…勘弁して下さい!』
私は泡立ったタオルを横取りしてやった
ふっ!見たか!
この俊敏な動きを!
『体は自分で洗いますから
安室さんは自分の事やってて下さい!』
安「おやおや、もう思春期ですか?」
ばかっ…!
思春期なんかとっくに通り越して
私はもう大人だっつーの!
むすっとしながら
私は体を洗い始めた
安室さんはにこにこしながら
笑っていた
泡を体に付けると
まだ少し、胸の先が滲みる
『……赤井さんめ…』
安「赤井がどうしたんですか?」
先ほどと同じように顔は
にこにこと笑っているけど
目が笑っていない安室さん
赤井さんのこと大嫌いかよ!
いや、人の事言えないわ…
大嫌いって叫んで
書斎を飛び出してきたもんなぁ。
赤井さんの事を心から嫌った訳じゃない
ただびっくりし過ぎて
出てきた言葉がそれだった。
私は体の泡をシャワーで
洗い流す
安「名前ちゃん」
そう言って後ろから体を
抱き上げられたかと思うと
そのまま一緒に湯船の中へ。
安「さて、聞かせてもらえるかな?」
頭の後ろから聞こえる声に
何からどう話せばいいのか
分からなくて黙り込む
安「取り敢えず、赤井の事は
夢の中の話じゃなかった、
という事でいいですね?」
私はこくり、と頷いた
安「それで、赤井に
何をされたんですか?」
私は赤く腫れた胸の先を
見つめた
言えないわ!あんな恥ずかしい事!
キス…されたのも、言えない。
赤井さんの唇の感触を
思い出して顔が熱くなる
男の人なのに柔らかい唇
唾液を絡んだ薄い舌
タバコの味。
.