第1章 太陽の光のもとに鳥は飛ぶ【笛・尾形智】
「尾形くんは高校でもサッカーするの?」
それはある日の休憩時間に問われた言葉だった。尾形は隣に立つ羽実を数秒見つめたあと、正面を向いてこたえた。
「高校では、やらないつもり」
「どうして?」
「サッカーは好きだけど、俺にはエンジニアになるっていう夢があるから。うえに上がったら、勉強に専念する」
「ふーん…」
沈黙が流れる。それをやぶったのは尾形だった。
「今週、試合があるんだ。…見にきてくれますか?」
尾形の緊張を帯びた目がまっすぐ羽実を見る。
「…うん、わかった」
間があった後、羽実が返す。場所と時間を告げたときちょうどチャイムが鳴り、二人は別れた。