第3章 力量をはかる
朝陽の光で目が覚めた。なぜだか身体が重いが起こし上げ、辺りを見渡す。見知らぬ部屋にいることを数秒考え、あぁそうかと納得した。こんのすけという人語を話す狐に連れられ、刀剣を顕現させて刀剣男士とし、本拠地である本丸へと来た。信じ難い内容ではあるが、じじつでえる。昨日はそのまま眠ったが、今日は詳しい説明をしてくれるという。布団から出て身支度を整えると、障子の外に影が立った。
「主ー、起きた?」
「あぁ」
最初に顕現させた刀剣男士であり近侍である、加州清光だった。障子を開けると、昨日とは違い和装を身にまとった彼がいた。
「あぁ、これ?部屋にあったんだ。和装の俺も可愛いでしょ?」
疑問に思ったのがわかったのだろう。加州清光が説明をして軽くくるりと回った。そこで悠青は今度こそ首を傾げる。
「可愛い…?」
「え、俺、可愛くない…?」
不安そうに眉をハの字に寄せる加州清光。その表情を見て、悠青は「そうか」と呟いた。
「お前は可愛くありたいのか」
「うん…その方が、愛してもらえるでしょ?」
「…」
うつむきがちになる加州清光の頭を、ぱちくりと瞬きしながら見つめる。だがすぐに悠青はふっと笑い、その頭を撫でた。
「え?」
「お前は可愛いよ。それに、例え可愛くなかったとしても、俺はお前を愛でてやる」
「え?え?愛で…!?」
「…そういう意味じゃないからな?」
若干顔を赤くして驚きの声を上げた加州清光に悠青が言うと、加州清光は「あっ、そ、そうだよね!あはは…」と乾き笑いをもらした。はぁ、と息をつく加州清光をじっと見ると、彼は「なに?」と悠青を見上げた。
「いや、お前のことをどう呼べばいいかと思ってな」
「好きに呼んだらいいと思うけど…俺の名前は名前だけど刀の名前だし」
「…」
そうか、人では無いのだった。なんて、当然の事を思う。人のカタチをしており意思も持っているが、彼は刀剣、モノである。だからといって物扱いができる悠青ではなく、むしろ刀剣は彼にとって〝愛でる〟ものであった。
「それならひとまず、清光、でいくか」
「ひとまず?まぁいいや、はーい」
首を傾げる加州清光に頷くと、廊下をとてとて歩く音がきこえてきた。