第2章 初めの一振と共にその地へ足を踏み入れる
最初に耳に入ってきたのは風で木々が揺れる漣の音だだた。そして、到着致しました、というこんのすけの声をきき、悠青は目を開いた。目に入ってきたのは、自分の部屋とそう変わりない造りの和室。畳の部屋があり、縁側があり、その外に、自分達は立っていた。
「ここが本丸、そしてこちらが主様のお部屋です」
「ここが、本丸…」
悠青はその場に立ったままぐるりと辺りを見渡した。後方には和造りの庭、その奥には小屋や畑のようなものまで見える。
「主様のお部屋の隣には近侍の待機部屋がございますので、しばらく加州清光にはそこで過ごしていただくことになるかと」
「りょーかい」
こんのすけの言葉に加州清光が頷く。その後ぐるりと玄関に周り、また審神者の私室へと戻ってきた。
「これからのことや他の刀剣男士の顕現方法は明日ご説明致します。本日はこのままお休みくださいませ」
「わかった」
「何かありましたらお呼びください。私もこの本丸にいますので」
再び頷くと、こんのすけは尾を揺らしながらスタスタと歩いて行った。彼にも専用の待機場所があるのだろう。加州清光と二人になると、彼の方から口を開いた。
「話したいことはたくさんあるけど…また明日かな。それじゃ俺は隣にいるから、何かあったら呼んでね、主」
「わかった」
じゃあね〜と言いながらひらりと手を振り、加州清光は隣の部屋へと入って行った。一人になり、ひとまず部屋の中央に立つ。またぐるりと辺りを見渡し、部屋の様子を確認した。
「今日からここが、俺の過ごす場所、か」
ここから、未知なる者達と共に、未知なるもの達との戦いが始まる。悠青は様々な思いを抱きながら床についたのだった。