第9章 所縁あるもの、北の地への出陣
ー1581年、奥州の戦い
それは、第十七代伊達家当主、伊達政宗初陣の戦いである。
概要を伝え、時空転移の部屋へと移動する。時代と場所の設定をしながら、そわそわとどこか落ち着きのない太鼓鐘貞宗と燭台切光忠を横目に映した。
「みっちゃん、また俺達の技でバンバン敵を倒そうな!」
「うん、かっこよく決めたいよね!」
「なんだかうきうきだね、ふたりとも」
目を輝かせるふた振りに加州清光が少々呆れを含みながら言う。それにも彼らは爛々と答えた。
「だって、政宗公をお守りできるんだよ?嬉しい限りだよ」
「そうそう!俺達まだソコにはいないけどさ、政宗公を守れることに違いはないんだぜ!」
「まぁ…俺もそれが沖田くんなら同じようになってるかもしれないけどさ」
「伽羅ちゃんだって嬉しいよね?」
不意に燭台切光忠が大倶利伽羅へと話を振る。彼は小さく息をつき、「別に」と呟いた。
「ノリが悪いぞ伽羅!あと素直になれよ!」
「お前らは少し落ち着け…」
はぁと呆れのため息まで出る始末。その様子をなんとも言えぬ表情で見るのは真白き刀。
「あんたは冷静なんだな」
「まぁ、俺は政宗公に仕えたわけじゃないからな」
織田時代の馴染みでもある薬研藤四郎が鶴丸国永へと声をかける。鶴丸国永は、傍観者のように彼ら三人を見て答えた。
「準備ができたぞ」
はかったかはからずでか、悠青が声を上げる。六振りは主の後ろに一列に並んだ。
「いざ、戦国時代、北の地奥州へ」
地に足を着けた途端、喧騒が耳に襲撃してきた。それほど離れていない場所で、今まさに合戦が繰り広げられている。伊達政宗はどの辺か、戦況はどうなっているのか、また時間遡行軍はどこに現れるのか。まずはそこを把握しなければならない。偵察に向かわせた薬研藤四郎によると、伊達政宗は撤退を始めたらしい。時間遡行軍は、未だ現れていないとのこと。
「可能性はふたつ。撤退中の伊達政宗を襲いに来るか、殿となった片倉小十郎を襲いに来るか」
場所は離れている。戦力を分散させて対応してもいいのだが、と悠青は些か思案する。とその時、戦地からの咆哮に反応したものがいた。