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刀剣乱舞/天青 【刀剣乱舞】

第8章 兄という存在



彼の目がゆっくりと開かれる。金の瞳が真っ直ぐと悠青を見据えた。
「私は、一期一振。粟田口吉光の手による唯一の太刀。藤四郎は私の弟達になりまする」
そして、美しいほどの一礼。思わず悠青も一瞬惚けてしまっていた。
「俺は天刃悠青。ここの審神者だ。よろしく頼む、一期一振」
「よろしくお願い致します、主」
ふわりと微笑む様が絵になる。悠青はそう思いながら言葉を続けた。
「藤四郎の兄、ということは前田達の兄刀になるのか」
「前田藤四郎、でございますね。弟の一人です」
「この本丸に今いる藤四郎は、前田、薬研、乱、秋田、鯰尾、骨喰…と、五虎退も粟田口派になるんだっけ。あ、俺、近侍の加州清光。よろしく」
「よろしくお願い致します、加州殿」
指折り数えながら名前を上げ、ついでに自己紹介をした加州清光に一期一振は笑いかけた。
「粟田口派の刀はまだまだ数多くおります。皆に、会えると良いのですが」
「そうだな…せっかくだから、会わせてやりたいと思う」
「お心遣い、痛み入ります」
軽く一礼し、一期一振はまた微笑む。笑顔の絶えない青年だな、というのが第一印象である。
「とりあえず粟田口派のやつら集める?」
「そうだな。頼む、清」
「りょーかい」
言って加州清光は鍛刀場を出て行く。悠青は鍛刀の精達に労いの言葉を掛けると、一期一振を連れて鍛刀場を後にした。








襖越しにわいわいと賑やかな子供たちの声がきこえてくる。実際は悠青の何倍も歳上なのだが、人成らざるもの故それはそれだ。襖越しの影で悠青が来たと悟った加州清光は、少しだけ襖を開けて小声で彼らに伝えた。
「新しい刀が来たとは言ったけど、一期一振だとは言ってないんだ。呼ばれた面子が面子だから、また新しい粟田口派だってだけ思ってるみたい」
「間違ってはないな」
一期一振も粟田口派の刀だ。短刀や脇差でないだけで。加州清光が中に戻って「主来たよ〜」と室内にいる粟田口派らに伝えた。騒いでいたのがぴたっと止まり、畳が擦れる音がいくつかしたかと思えばそれもまたぴたりと止んだ。悠青はそれを待って引手に手をかけると、ゆっくりと滑らせる。ぴしっと正座して並んだ粟田口派の皆に、さすがと小さく笑みを浮かべる。まだ一期一振の姿を見せないように室内へと足を踏み入れた。

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