第7章 救いたいもの、救えないもの、その決意
「短刀だ!」
短刀を咥えた蛇のようで素早いのが特徴のそれ。咄嗟に構え、和泉守兼定はキンッとそれを斜め上空へ押し流した。それを合図に次々と時間遡行軍が現れる。各々本体を構え、駆け出した。
「悠青サンを頼むぞ、加州!」
「りょーかい!」
悠青のそばには加州清光が残る。彼もまた、いつ時間遡行軍がこちらに向かってきても対処できるように身構えた。悠青もまた、刃を抜いて警戒するのを怠らない。
刃の重なる音が幾重にも交わりまるでひとつの曲のようになる。激しく荒い旋律は、まるで今まさに激情の最中にいる彼の者を表しているかのよう。
(行かせねぇよ、土方さんのところへは…!)
自分は最期に主のそばにいることができなかった。物である自分には、それをさせてもらう権利が無かった。
(行かせない…土方さんが、土方さんのままでいられるために…!)
自分は最期に主のそばにいることができた。それから自分はどうなったのか、後世にははっきりとは伝えられていないらしい。それでも自分は今、ここにいる。
「「歴史は 俺・僕 達が守る!!」」
和泉守兼定と堀川国広が先陣を切り、皆が後に続いて時間遡行軍を斬り伏せていく。彼らに、迷いはなかった。