第7章 救いたいもの、救えないもの、その決意
喧騒が遠くから聞こえる。降り立った地は戦地から少し離れた場所のようだ。おそらくこの辺りから、時間遡行軍が出現してくるのだろう。土方歳三を生かし、歴史を変える為に。
おそらく土方歳三がいるであろう遠くを見やり、堀川国広がぽつりと呟いた。
「函館……ここで時間遡行軍に手を貸したら、土方さんを死なせずに済むかもしれないんだよね」
「国広」
「わかってる、わかってるよ、兼さん……でも…目の前が、滲んじゃってるんだ……兼さんだって、泣いてるじゃない」
「……うるせぇ、今だけだ」
ふた振りの声が震える。ず、と鼻をすする音を聞こえない振りをし、悠青は時間遡行軍が現れると思われる地点をじっと見据えた。
ぴくり、と悠青の指が震えた。部隊の六振りの場の空気の異変に気付き、悠青と同じ方角を見据える。暗雲が空を覆い、赤黒い稲光が沸き立つ。轟音を立て、それらは彼らの前に落雷した。一斉に抜刀し、悠青は後ろへ退がる。初陣であった本能寺の一件以降、悠青は共に出陣はするものの、前へ出ることはなくなった。自分はここで自分にできることをと、改めて思うようになったのである。
落雷した地に舞う砂塵幕より、突如小さな影が二つ飛び出してきた。