第5章 初出陣ー本能寺の変
本丸に帰還すると、こんのすけに手入れ部屋へと案内された。傷ついた刀剣男士達はこの部屋で“手入れ”をする。手入れと言っても施すのは人の身。どちらかと言えば手当てだ。しかし刀剣男士の手当てには霊力を消費するため、まず悠青の傷の手当てを堀川国広が行い、それから始めることになった。
「…で、具体的にはどうすればいいんだ?」
「基本的には主様と同じようにしていただければ問題ありません。手当てをする上で、自動的に霊力を消費すると考えていただければ」
「なるほど、な。ひとまずやってみるか…」
言って悠青は加州清光に向き直った。最後の打刀の切っ先は2人とも同じ場所をとらえたらしい。加州清光の左腕には斬り筋があった。まずは水で血を拭きとり、消毒液を湿らせた綿を当てる。傷口に綺麗な布をあてて包帯を巻いてやれば完了だ。ふう、と息をつけば、確かに霊力を消費したようで、少々疲労感があった。加州清光を見やれば、何やら目をぱちくりさせている。どうした?と問えば、いや…と返って来た。
「手入れって、こんな感覚だったんだなって」
「あぁ…刀の手入れは油や打ち粉だからな」
「うん…人間の身体って、すごいね」
改めてしみじみ言う加州清光の頭を撫でてやれば、嬉しそうに目を細めた。少しの間そうしていたが、不意に加州清光が「あっ」と声と顔を上げた。
「ねぇ、なんで“きよ”なの?」
「…今か」
「きく頃合い逃しちゃって。ねぇ、なんで?」
「…」
じっと見つめてくる加州清光の視線から逃げるように悠青は目を逸らす。それから「あー…」と声を漏らして、答えを出した。
「まぁ、その、なんだ…愛称、ってやつだな」
「愛称…俺に?」
「あぁ」
「…愛称」
加州清光は、へへ、と嬉しそうに笑った。そんな様子を見て悠青も小さく笑みを浮かべ、また彼の頭を撫でるのであった。