第5章 初出陣ー本能寺の変
「っ!」
なんとか横に転がって避け、落ちてきた、否、斬り下ろしてきたものを睨みつける。ゆらりと動く影、時間遡行軍。だが先程戦っていたもの達よりも、身体も刃も大きさが異なる。
「…太刀か」
太刀、それは打刀よりも長く大きな刀。悠青の元にはまだ来ていない刀種だ。打刀である加州清光と歌仙兼定が前に出、小夜左文字が悠青のすぐ前に立って構えた。
「…やれそうか」
「やれそうじゃない、やるんだよ」
に、と小さく笑って見せ、加州清光は一層深く構える。ジリ、ジリ、と太刀がにじり寄っていた。それぞれが間合いをはかり、踏み出し時を探っていた。数十秒か数分かが経った頃、先に動いたのは太刀の方だった。
「オォォォォ!!」
「っらぁ!!」
雄叫びを上げて斬りかかってきた太刀の刃を加州清光が受け止める。さらにそれを歌仙兼定が弾き返した。2人対1体が斬り結んでいる。それを悠青は構えを解かぬまま見守っていた。やがて太刀の動きが鈍くなってきたのを感じた小夜左文字が一気に突っ込む。その心の臓があるであろう位置に短刀を突き刺すと、太刀は霧散するように消え去った。静けさと喧騒が戻った空気に大きな息を吐く音がたつ。悠青もまた安堵の息を漏らした、その時だった。
「っ、主後ろ!!」
声がきこえ、声の方とは逆方向に振り返れば、目の前には鈍色に光る刃。一瞬では反応できないと、脳だけが反応していた。左腕をかすめる痛みと土のにおい。何かがのしかかる重さを感じながら体を起こすと、そこには黒と赤があった。
「…、清光」
「へへ、俺は大丈夫だよ。ちょっとかすっただけ。それより主こそ、怪我させちゃって…」
身体を張って加州清光が悠青を押しのけ、その隙に歌仙兼定と小夜左文字が突如襲いかかってきた打刀を斬り伏せたのであった。加州清光の落ち込む様子を見て、悠青は首を振った。