第4章 最初の鍛刀
「鍛刀が終わったようです。見に行きましょう」
「今のは鍛刀完了の合図か」
なるほどと言いながら、歩いて行くこんのすけの後に続く。鍛刀場へ戻ると、鍛刀の精達が一列に並び、その前の鉄石に一振りの刀が置かれていた。
「ほほう、この大きさですと、短刀ですね。一発の攻撃力や打たれには少々弱いですが、は小回りがきき、敵の懐に入りやすいのが特徴です」
「そうだな…」
「ささっ、主様、この刀剣に、力を流して上げてください!」
こんのすけに促され、悠青は短刀のそばで片膝をつく。少し鍛刀の精達が下がり、新たな刀剣男士が誕生する様を見守った。
「…」
加州清光にこんのすけ、鍛刀の精達の視線は気になるが、悠青はひとつ深呼吸をすると集中した。イメージするのは、加州清光を人の姿にした時のこと。そっと手を伸ばし、その柄に触れる。すると悠青の指先と柄の接点から、ふわりと桜が溢れ出した。くるくると巻き上がって刀本体の周りを巡り、立ち昇る。それはちょうど、10代前半の子どもくらいの大きさだろうか。合わせて悠青が立ち上がると、桜は上から下に向けて巻き下がっていった。紺の帽子に薄茶の髪が現れ、白い肌にまた紺の服。ひらっと太ももあたりまでのマントが揺れた。目を閉じていた少年が、ゆっくりと目を開ける。ぱち、とひとまたたきした後、悠青に向けて一礼した。
「前田藤四郎と申します。末永くお仕えいたします」
「あぁ…よろしく。…藤四郎、でいいのか?」
悠青が呼び方をきくと、少年、前田藤四郎はゆるりと首を振った。
「いえ、僕には粟田口派の兄弟が数多くいますので、どうぞ前田、とお呼びください」
「そう、なのか。わかった、前田」
「はい、主君」
淡く微笑む少年に、悠青も小さく笑みを浮かべた。
「これにて主様の初めての鍛刀は完了ですね!」