第3章 力量をはかる
「新撰組一番隊組長沖田総司が愛用し、池田屋でも共にした刀、加州清光、というのは知っていたからな」
「そう、なんだ…」
「主様は歴史にお詳しいのですか?」
複雑な思いがあるらしい加州清光をよそに、こんのすけが悠青に問いかける。それに悠青は「まぁ」とこぼして続けた。
「研究者のように詳しいというわけじゃないが、まぁそこそこにな。刀にしても、名をきいただけでわかるものは少ない。…歴史の知識があるから審神者に選ばれるわけじゃないのか?」
今度は悠青の素朴な疑問。こんのすけはそれに「いえ」と首を振った。
「刀剣男士を顕現させられることが前提となりますので、霊力の高さが重要となります。その点では主様は両方を備えられた特別な方ということになりますね!」
「別に特別でもなんでもないが…」
「いえいえ、はじめに言っておられましたが、剣の腕もたつのでしょう?」
「へぇ…」
これには興味がわいたのか、加州清光が声を漏らす。だが悠青はかぶりを振って答えた。
「あくまで俺の時代における、だ。実戦で使えるものではないだろ」
「ふーん…じゃあさ、手合わせしようよ」
「は?」
加州清光の発言に思わず変な声が出る。なにやら楽しそうな加州清光を、悠青は怪訝そうに見た。
「いまはまだ俺一人でしょ?稽古相手もいないし、ね?」
「…構わ、ないが…真剣でやるのか?」
「ほんとはそれがいいけどね。稽古だから木刀でいいかな」
言うと加州清光は「んーっ」とのびをして立ち上がる。
「それじゃ、半刻後に道場でね」
ひらりと手を振り、加州清光は広間を出て行った。悠青はため息をひとつつくと、広間に備えられた時計を見て呟いた。
「半刻…一時間後か」
身支度をするには充分、まずは片付けか。と悠青は食器を持って立ち上がり、片付けと稽古の身支度を始めるのであった。