第4章 帰らぬ人
「本当に上手く行きますかねぇ」
下を歩くこんのすけがそう呟く。
『ま、まぁ、上手くいかなければ、別の作戦を考えれば良いわけだし』
と言っても、いきなり近侍にしたのはハードルが高すぎたか?
でも鶴丸さんと仲良くなるには、まず私がどういう人なのか知ってもらった方がいい。
私は前の審神者とは違うということを。
『よし!頑張るぞ!!平凡な私を見せれば、仲良くなれる?いや、仲良くなるぞ鶴丸さん作戦!!』
「センスの無い作戦名ですねぇ」
『うるさいぞー、こんのすけ』
「俺が何だって?」
ふと聞こえた声に私とこんのすけは足を止めた。
壁の影から出てきたのは、ご本人の鶴丸さんだった。
良かった、大倶利伽羅さんの説得が上手くいったみたいで。
『私は鶴丸さんと仲良くなりたい。それだけです。今日は近侍よろしくお願いします』
「…」
無言の圧力。
鶴丸はただ鼻を鳴らすだけだった。それを一応返事だと捉え、話を進める。
『近侍といっても側にいてくれるだけで大丈夫です。今日は雑務しか行わないので』
「ふっ…それなら、俺じゃなくても良いんじゃないのか?」
『いえ、鶴丸さんにお願いしたいのです』
私がそう告げると、鶴丸さんは顔を背けた。
大丈夫。鶴丸さんはまだこの場にいてくれている。
『まずは…約束していた大典太さんの手入れですね』
そんなわけで、私達は手入れ部屋へと向かっていくのだが如何せん空気が重い。
ちょっと待て、これは逆に私を知ってもらえるチャンスではないのか。
チラリと鶴丸さんを盗み見ると、ばっちり目が合った。
「なんだ…」
な、何か話題を…
『あ、その。私、趣味があって漫画読む事とゲームなんですよ。だから荷物も漫画だらけで…鶴丸さんは何か趣味はないんですか?』
「…」
「ふーむ。私はお昼寝が好きですねぇ」
返答ありがとう、こんのすけ。
『あー、私好きな食べ物が沢山あって、一番はちょっと選べないんですけど。あ!好きなフルーツは桃ですね。あと、歌仙さんの作る料理はどれも美味しくて好きです!』
「…」
「私は油揚げ、歌仙殿の作るいなり寿司も絶品ですね」
また無言。