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山桜【刀剣乱舞】

第4章 帰らぬ人



長谷部さんが立ち上がった。
今揉めるのはまずい。口を開こうとした時、2人の間を大きな影が分け入る。


「やめよ、鶴丸。おぬしの気持ちも分かるが、主も考えのあっての事だろう?」


岩融さんが私の襟を掴む、鶴丸さんの手を引き離す。


『はい。近侍の変更はありません』

「なっ…チッ!」


鶴丸は岩融に掴まれた手を払いのけ、大広間から飛び出してしまった。


『あっ!鶴丸さん!』

「俺が行く」


と、その後を大倶利伽羅さんが追いかけて行った。
シーンと静まり返る大広間。

まさかこんな空気にさせてしまうとは。


『あー、えーと。はい!皆さん!今日も頑張っていきましょう!解散!!』


今度はざわめき立つ大広間。
えー。もうどうしよう。


「主も興な事を考えるんだな。少しよいか?」

『わ、すみません』


素早い手付きで岩融さんに崩れた襟を直してもらう。


「うむ!これで良かろう!」

『ありがとうございます。岩融さん』

「主様ー!」


二人の間をボフンという音と煙と共に割って入ってきたのは、政府に報告へ行っていたこんのすけだった。


「申し訳御座いません!帰るのが遅くなってしまいまして…何かあったのですか?」


大広間にいた皆の様子を見かねたこんのすけがそう尋ねる。


『んん?!なん、なんともないよ!さぁ、仕事しなきゃなぁ!!はは、はははっ!!』


少しわざとらしかったかもしれないが、大きな笑い声をあげながら執務室へとこんのすけを押していく。

すると後ろから誰かが私を呼び止めた。


「主!」

『陸奥守さん。どうかしましたか?』

「おんしゃ、鶴丸が近侍でええんか?鶴丸は、その…主に反感を持っちゅう。だから」

『陸奥守さん』


陸奥守さんの言いたいこともわかる。私を心配してくれているのだ。
だけど審神者の私は、この問題から目を反らしては駄目だ。
遅かれ早かれ、鶴丸さんと真正面から向き合わなければ、今のこの溝は埋まらない。


『私なら大丈夫ですから。鶴丸さんを信じましょう?』


そうだ鶴丸さんを信じるしかない。


『陸奥守さんは今日非番ですよね。ゆっくり休んでいてください。それに私には、鶴丸さんと仲良くなる"作戦"がありますから!』

「作戦?」

『はい!』


廉は自信げな様子で笑った。
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