第4章 帰らぬ人
『…あ、そうそう。色は藍色が一番好きで、それでこの着物も藍色に仕立ててもらったんです。鶴丸さんは白がお好きなんですか?』
「…」
「私は~」
駄目だ。さっきから私とこんのすけだけの会話になってる。
ま、まぁ、少しは場繋ぎになったし良いか。こんのすけに感謝しなきゃ。
ふと視線を下に向けた時、目の前に白い影が横切る。重い音が廊下に響いた。
「あんたに一つだけ教えてやる」
鶴丸さんの金色の瞳が近くにあった。
「俺が白一色なのは、戦場の赤が映えるからだ」
『……』
ナ、ニ…ソレ……めちゃくちゃカッコいい!!!
『すいません鶴丸さん。今のセリフもう一回お願いします!録画しますので!!』
「…!!」
予想だにしていなかった廉の返答に、鶴丸は面を食らった。
実は廉を怖がらせる為に言ったのだった。
「っ二度とやらん!」
『あと一回だけで良いんです!お願いします!』
「あ、主様らしいですね」
『ん?そう?』
こんのすけが何度も頷く。私らしいって何だ?
こんのすけの言葉に軽く疑問を抱いたその時、隣の襖がいきなり開かれた。
「…何事だ」
『大典太さん!』
「…主か」
気付けば私達は手入れ部屋の前に来ていた。
大典太さんは私と鶴丸さんを見て、言った。
「何か、あったのか?」
『いえいえ!何もありませんでしたよ!お待たせして申し訳ありませんでした!』
大典太さんを手入れ部屋へと押し込み、手慣れたように手入れを進めた。
傷は少なく、手入れ時間は短く済みそうだ。
『では大典太さんはもう少しの間、ここで休んでいて下さい』
「あぁ、わるいな」
ではまた、と手入れ部屋から出る。
手入れ部屋の横の壁には、大典太さんの手入れ時間を表すパネルが動いていた。
『じゃあ、この後は報告書を書かないといけないんですが…先に部屋の片付けでも良いかな?』
「それは良いですね!部屋が綺麗になれば、仕事も捗りますし!」
『うん。それでも良いですか、鶴丸さん』
「……」
また顔を背ける鶴丸さん。
返答はしてくれないが、なんだかんだついて来てくれている。