第4章 帰らぬ人
今はこれで十分だ。
『じゃあ、誰かに片付け手伝ってもらおうかな』
「ええ。今日中に報告書も終わらせなくてはいけませんからね!」
『ちょっと嫌な事言わないでよ。こんのすけー』
「本当の事を言ったまでですよ?」
にこりと笑うこんのすけ。
うーん、私の事をいじっているのか、それとも素なのか。侮れない狐だ。
『そうだなー。誰が、良いか。力持ちそうな人かー』
「あ!あのお方はいかがですか?」
『あの人?』
◯◯◯
後ろを見やり、鶴丸さんがついて来ていることを確認して小さく微笑む。
よしよし、良い感じゃないかこれは!
『あ!御手杵さーん!』
「んお?どうしたー主」
こんのすけが提案した人とは、御手杵さんのことだった。
ゴロゴロと部屋で休む御手杵に声を掛ける。
『えーと、お暇なら部屋の片付けを手伝って頂きたくて、今大丈夫ですか?』
「部屋の片付け?あー!確かに主の部屋汚いもんなー」
御手杵さんの悪気のないストレートな言葉が、私の胸に突き刺さる。
『そ、そうなんですよ。だから流石に片付けないとなって』
「良いぜ。俺も手伝うよ」
思っていたより早い了承に驚く。だが、すぐに頬を緩めた。
『ありがとうございます!』
良かった。これで早く片付けられるぞ!
私は御手杵さんの部屋から出る。すると隣の部屋から顔を覗かしている大きな人達と目があった。
『…ん?』
「はっ!?」
パタンと閉まる隣の襖。
『えっ、ちょちょ、ちょっと!』
私に用があったのか?でも襖閉められちゃったし。
「んー?蜻蛉切達の部屋がどうかしたのか?あ!どうせなら、あいつらにも手伝ってもらおうぜ!」
『え!?……そうですね!!』
これを機に仲良くなれるかもしれないと考えた廉は目を輝かせた。
「おーい、入るぞー」
『お邪魔します!』
御手杵さんの後ろに続く。
すると中には、座ってこちらを見上げる二人の姿があった。
「も、申し訳ありませんでした。覗きなどと不行儀な行いを…ほら村正も!」
「私もデスカ?」
目が合った途端、頭を下げようとする二人を私は慌てて止めた。