第4章 帰らぬ人
「駄目だ。寝れば回復するとは言え、連日力を使いすぎだ。それに報告書、終わってないんだろ?」
『ぐっ…』
薬研がニヤリと黒い笑みを浮かべた。
薬研、痛い所突いてくるな。
『分かった…』
「分かれば良いんだ」
「立場が逆転してるな」
ボソリと溢した山姥切さんのツッコミに、私はまた唸った。私は咄嗟に話を反らすべく、この場に居なかったこんのすけの事を二人に聞く。
『あ、こんのすけは?』
「こんのすけなら、政府に昨日の事を報告しに行くと言ってまだ帰っていない」
『そ、そうなんですか。あ、昨日?』
応えてくれた山姥切さんにぎこちなく頷き返し、あることに気付く。あの頑丈な蔵を開けた出来事は、"昨日"だということ。つまりは……
『また寝過ごしたのか』
薬研がコクンと頷いた。
はー。こんな寝てばっかの審神者で本当に申し訳ない。
作ってくれたご飯も食べそこなるし。
「兎に角、大将は今日は安静にしてくれ」
『はい』
と、薬研に素直に返事を返した。
「おい、居るか」
その時、襖の向こうから声が聞こえた。
あまり聞き覚えのない声だ。
『どうぞ』
二つ返事で返答すると、閉じられていた襖が開かれる。
「大倶利伽羅か。どうした」
「あんたに…頼みたい事がある」
『頼みごと?』
3人は何事なのかと顔を見合わせた。
◯◯◯
その後大倶利伽羅さんからの頼みを聞き入れ、一旦山姥切さん達と別れる。
私は安定の朝風呂に向かった。
薬研を待たせているので超スピードで風呂からあがる。
『薬研お待たせー』
「おう」
次に二人で向かったのは大広間。丁度これから朝餉の時間だそうだ。
またあの冷たい視線を受けるのか。いやいや、それを変えていくのが私の仕事だろ!
『よし。皆さんお早う御座いまーす!』
私は大広間の襖を開け、大きな声で挨拶をする。案の定、大広間にいた人達の視線を自身へと集めた。
ドキリと心臓が音を立てる。
「主!元気になったんか!?」
「おぉ、主!」
「主!!回復なさったのですね。良かった」
と、陸奥守さん、御手杵さん、長谷部さんが私が大広間に入るなり声を掛けてくれた。
3人が掛けてくれた言葉に、心が少し軽くなる。