第3章 蔵
自分の味方はいないと分かった廉は、大典太に連れて行ってもらうことになった。
但し顔は手で覆った状態で。でないとこの真っ赤な顔を皆に晒すことになるからだ。
「そんなに俺が嫌なら…」
『嫌じゃ無いですよ!全然!!私の事は気にしないで下さい!!』
お姫様抱っこって。異性に対する免疫が皆無な私には、刺激が強すぎる……!!
心の中でそう叫ぶ廉だが、勿論それは大典太には聞こえる筈も無い。
「大丈夫だせ、大典太の旦那。大将は照れているだけだ。その証拠に、ほら耳が真っ赤だからな」
『あー!!!薬研言わなくていいから!!』
笑ってからかってくる薬研に、私は声を上げた。終にはこんのすけもからかってきて、更に顔へ熱を集めた。
「おー、怖い。じゃあ俺っちは氷のうでも取ってくるか」
「私も参ります!」
薬研とこんのすけはそう言い残して走っていった。
逃げたな二人共。
私の部屋に着くと、大典太さんが私を床に下ろしてくれた。
ここまで連れてきてくれたのに、顔を隠したままって失礼だよなぁ。
そう思って手を顔から退かし顔を上げると、大典太さんとバッチリ目が合った。
「…っフ…まるで茹で蛸だな」
『タコ!?ちょっと大典太さんまでからかわないで下さい!!』
タコってなんだ!!タコって!!他にも表現あるだろー!!
眉をひそめて大典太を見上げる。だが数秒もしない内に私は小さく吹き出した。
『……っはは、大典太さんありがとうございました。今日は部屋でゆっくりとお休みください。手入れもするべきだと思うんですけど。すみません力の使い過ぎでヘトヘトでして』
「俺の手入れはまた今度で構わない。あんたも休んだ方が良い」
『ありがとうございます。じゃあ、前田に…』
「はい!僕が案内致します!!」
前田の早い返答に驚いたが、廉は笑って部屋を出ていく二人を見送った。
良かった。無事に助けられて。
そう考えながら二人の姿が見えなくなると、此処に来るまでずっと口を閉ざしている山姥切に目を向けた。
『山姥切さんどうぞお座り下さい。すみません私の荷物がごちゃごちゃしているんですけど』