第3章 蔵
山姥切が一度顔を引っ込めると、急に上が騒がしくなった。そして上から何か長細い物が宙を舞った。
それは宙で一回転をして、落ちてきた。
『は!!?』
瞬時に腕で頭を庇ったが、その衝撃は来ず隣にドスッ…!!と 音を立てて突き刺さった。
『っぶな!!ちょっ、何やって…』
と、その降ってきた物を見るとそれは大典太光世だった。私は唖然とし、そして何故か引かれるように大典太に触れる。
すると大典太がピカッと光った。
『っ……!!』
そうっと咄嗟に閉じた眼を開く。廉の目の前には舞い散る桜の花びらと黒髪の大きな人の姿があった。
『大典太さん?』
「あぁ、天下五剣が一振り。大典太光世だ」
大典太さんはそう呟いた。
『良かった。もう顕現してくれないのかと思っていました』
「良かった、か。あんた、変わり者だな」
『んな!!?』
初対面でそれ言いますか!?しかも真顔で!穴の中で!
と、私は心の中でツッコミを入れる。
「悪いな。俺に触れられるのは嫌だろうが…」
大典太さんは独り言のようにまた呟いて、私の背中と膝の下に手を入れ持ち上げた。
『ちょちょちょ、何やって!!?』
思わず動揺してしまう廉をよそに、大典太はそのまま跳躍し穴の外に出た。
フワッとした感覚の後に訪れる軽い反動。気付けば既に穴の外にいて、山姥切達も眼を丸くしていた。
「大典太さん…!!」
前田はハッとして大典太の名前を呼び、今にも溢れそうな位涙を浮かべた。
「前田か、久しいな」
「はい!大典太さんも、御無事で何よりです」
前田は嬉しそうに笑った。大典太は前田に優しい笑顔を向けて、次に廉を見た。
「あんた、足を怪我しているんだろ?このまま運んだ方が…いや、俺に触れられるのは嫌なようだったな」
『いえいえ!!そう言うわけではなく、私は歩けるので下ろして…』
と言い掛けた所、薬研とこんのすけと前田がその言葉を遮った。
「旦那!!そのまま運んでやってくれ!」
「ええ、私もそれが良いと思います!!」
「僕もその意見に賛成です!!」
『猛反対!?大丈夫ですって!ね、山姥切さん!?』
山姥切に助けを求めたが、サッと視線を反らされた。