第3章 蔵
ほっとした途端、先程までは無かった疲れが出る。だが今は疲れよりも、錠を壊せた事の嬉しさが勝っていた。
「やったな」
山姥切が土埃を叩きながら呟く。その視線の先には半分に割れたダルマ錠が落ちていた。
『はい。うぅ、やったー!!』
廉は嬉しさのあまり山姥切に抱きつこうとして、ハッと我に帰る。
わ、私は、今何を…!!?
不自然に腕を掲げた状態で固まる廉に山姥切も固まった。廉はそれを誤魔化すように笑って、言い訳を探す。
『あー、えと、これは……ハイタッチです!ハイタッチ!』
「…はい、たっち?」
『そうです!そうです!両手を上げて相手と手を合わせるんです!』
ふと思い付いた言い訳をペラペラと話す廉に山姥切は"そうか"と呟いて両手を上げる。
『…え』
「なんだ。こうじゃ、ないのか」
『あー!!いえいえ!合ってますよ!!』
まさかノッてくれるとは思わなかった。
私は山姥切の両手に軽く手を弾ませた。すると、山姥切は眼をぱちくりとさせフッと微笑んだ。
本人は気付いていないが山姥切のフードは外れており、その表情は丸見えで思わずドキンと胸を高鳴らせた。
不意討ちは強い。
「主君!!山姥切さん!!お怪我はありませんか!?」
違う方向に飛ばされていた前田達が私達の元へ駆け寄ってきてくれた。
『私は大丈夫!皆こそ怪我は…!?』
確認を取ると特に酷い怪我はしていないようだった。
それから私はヨロヨロと立ち上がり、薬研の手を借りて蔵の前に歩いていく。そして蔵の扉が鈍い大きな音を立てて開け放たれる。
フワリと埃が舞った。
『埃が凄いなー。それに暗くて良く見えない』
「それでしたら私が!」
こんのすけが首の鈴をチリーンと一度鳴らすと、その鈴が光った。
光の先には色んな物が積み重なっていた。
この中に大典太さんが…
「…一応聞くが、大将はどうする?」
薬研が私の方を振り返り言った。それに私はハッキリと答える。
「勿論私も探すよ!」
「言うと思ったぜ」
困ったように笑う薬研に私も笑みを返し、私達は蔵の中へと足を踏み入れた。
前田の言っていた通り、蔵にある棚には紙の束が多く見られた。
『あ、あれ!』