第3章 蔵
山姥切の目が揺らいだ。
そして廉の視線をサッと避けた。
「…次で最後だ」
『!!!』
「旦那!!何で!?」
薬研は山姥切が許した事に驚く。
山姥切は小さく溜め息を吐いて言った。
「どうせ開けるまで続けるんだろう?あんたは頑固らしいからな」
『え、あー、まぁそうなんですかねぇ…?』
「あぁ、だから次で最後と約束してくれ。
次で開かなくても別の作戦を立てれば良い。あんたは手入れでも力を使ってる。これ以上力を使うのは危ない」
廉はまだ腕を掴む山姥切、薬研、前田と視線を向け"分かりました"と頷いた。
『…次で最後にします』
と言うと、腕を掴む山姥切の手が離れた。
次で開ける!!!
気合いを入れ直して廉は少し刃こぼれしてしまっている斧を構え、錠に向かって一気に振り下ろした。
ガキーン!!!
斧が錠のに触れる間際で止まる。私はすかさず神力で錠の守りに対抗する。
錠の守りからバチバチと火花が散った。
いける!!このまま……もう…少し!!
廉は全力で神力を流し続けた。斧を徐々に押し進める。
しかし疲れからか足元がふらついた。廉は直ぐに持ちこたえたものの、斧が段々と押し返されはじめる。
っ駄目か……!!
「っ…あと少しだ!!頑張れ!!」
諦め掛けたその時、後ろから斧を支える手が伸びてきた。
山姥切さんだ。
『…はい!』
突然の協力に驚いたが、廉は力強く返事を返した。
大典太さんを…助ける!!
山姥切の助けを借り、廉は斧を持つ手を握り直し力を振り絞った。
『…壊れろー!!!!』
跳ね返されつつあった斧はまた錠へと押し進められ、そしてついに。
バキーン!!!
錠が真っ二つに割れた。
途端に辺り一面を強い風が吹き付けた。吹き飛ばされる瞬間、山姥切さんが私を庇うように腕を回される。
不意にその風を食らった私達は、数メートル後方に吹き飛ばれ、鈍い音を立て地面に着地をする。
『いっつつ…あ!すみません!!山姥切さん!!!』
「っ……あぁ、あんたは、大丈夫そうだな」
『はい!…皆は!!』
他にも飛ばされた薬研達を探すと、三人とも無事なようで、ほっと胸を撫で下ろした。