第3章 蔵
『ハハ、山姥切さんも私の心配してくれるんですね』
「ち、違う!ただ今のあんたの力じゃ、開けられないと思っただけだ!」
心配してたんじゃないんかい。
でもここで一つ気付く。鍵穴のない錠前で、私つまり審神者でないと開けられないとすると…
「この錠前は審神者の力でしか開けられないようになっている」
薬研が答えてくれた。
『なるほど、なるほど』
触るだけで拒否されたってことは、もっと強い力を流せば反発してバーンと壊れないかな。
「やはり、駄目ですよね」
もう開けられないと思ったのか前田が視線を下げ、薬研も落ち込んだ様子を見せた。
『まだ諦めるのは早いって。もう少し試してみよう。ね?』
と言ったはいいが、どうしたものか。
強い力といってもどれくらい必要なのか。私の持っている力で足りるのか。
私はただのその場の思いつきで錠前の前に出る。
手を前に突きだし、手から念的な物を放射するイメージをする。そう陸奥守さんに手入れを行った時のように。
『んんーーー!!はっ!!!』
「…主様?」
「大将?」
なにも起こらない。
『ん、ゴホンっ。さぁどうやって開けようか』
「大将、今のは何だったんだ?」
『え?何の事?』
私は皆の視線から逃れるように、他所を向く。
と、その時。錠前がバチりと小さく弾けた。
「今のは?」
山姥切さんが錠前を確認するが、音を発しただけで特に変化はなかった。
だが私が波動的なものを打った後に起こった、ということは少なからず効果はあったのだろうか。
『うーーーん。よし。ここは物理だ!』
「「「…!!!」」」
ノリで言ったつもりだったのだが、私の手には斧が持たされていた。
「主様!どうかご無理はなさらずに!」
『うん!大丈夫!』
前に向き直り錠を睨む。
その後ろでは三人と一匹が固唾を飲んで見守る。
『せーの!』
掛け声と共に廉は斧を振り上げ、錠へと一気に下ろした。