第3章 蔵
「それは、まだ分かりません。その蔵を守る力は前任の主君の力によるものなのです。なのでもしかしたら、今の主君の御力で開けられるのではと思い、ご相談致しました」
私は頷いた。
開けられるかは実際に行ってみないと分からないが、可能性があるならやってみる価値はある。
『分かった。それでその蔵の中って何があるの?お宝とか?』
「いえ、彼処にあるのは主に出陣した際の報告書が保管されています」
『報告書?』
「あぁ、だが今回はそれが目的じゃない。あの蔵の中には、仲間が閉じ込められているんだ」
『えぇ!!!』
あまりの衝撃に声を上げた。
薬研の話によると、その閉じ込められているのは"大典太光世"という天下五剣の内の一振。
何故閉じ込められているのか。それはその刀の持つ霊力の高さが故だと言う。
前任の審神者の際、他の審神者の本丸で不満を募らせた刀剣達による一揆があったという報せが届いた。
それを恐れた前任の審神者は霊力の高い大典太に警戒心を抱き、その蔵に厳重な守りを掛けて閉じ込めてしまったらしい。
自分勝手な前任の審神者の行動に、腹の奥底から沸々と怒りが湧いた。しかしそれを今爆発させたところで意味はない。
私はその怒りが表に出ないよう必死に堪える。
『薬研、前田!その蔵へ案内してください。一刻も早く大典太さんを助けないと!山姥切さんも!』
「はい!」
「おう!」
勢い良く立ち上がり、私は薬研と前田の案内で蔵へと向かった。
その蔵は外の少し歩いたところにあり、とても大きな蔵だった。その蔵の入り口にはダルマ錠が掛けられている。
しかしそのダルマ錠に鍵穴は見当たらない。
『これ、どうやって…』
「おい!!それに触ると!!!」
バリッ!!!
『いっ!!』
錠に触った瞬間強い電撃のようなものが伝わった。
「大将大丈夫か!?」
『うん、たぶん大丈夫』
駆け寄ってきた薬研に心配を掛けまいと笑いかけた。だが薬研、前田、こんのすけは不安そうな顔を止めない。
「これはあんたには無理だ」
山姥切がポツリと呟く。そんな山姥切に私はまた笑い掛けて言う。