第3章 蔵
「だから俺も主はどういう人物なのか、己の目で確かめたくなったわけよ!目は心の鏡と言うしなぁ!!」
『な、成る程』
それであんなじっと見られてた訳ね。ちょっと見極め方が独特な気がするけども。
「今剣も主に臆する事は無いぞ!」
岩融は自分の後ろに隠れている今剣を振り返る。
だが今剣は眉間に皺を寄せ、岩融の後ろに隠れながら言った。
「いわとおしがそういうのであれば、きっとあるじさまはわるいおかたではないのでしょう。ですがぼくは、まだしんじられません」
懸命に自分の想いを伝える今剣に私は静かに頷いた。
『はい、それでも大丈夫ですよ』
「え…」
「主様、そろそろ手入れの続きを…」
『あぁ!!そうだったそうだった!』
こんのすけに言われ、忘れかけていた手入れを思い出し私達は二人の手入れを急いだ。
その後も刀剣達の手入れを続けていき、次で最後の手入れになった。
山姥切が次に連れてきたのは、栗毛のおかっぱの男の子だった。更にその子の後ろから薬研が姿を表す。
『あれ?薬研。それと』
「前田藤四郎と申します。主君に御願いがあって参りました」
前田は部屋に入ると背筋を伸ばし正座をして言った。小さきながらも凛とした雰囲気に自然と私の背筋も伸びた。
『分かりました。でもその前に手入れをしましょう』
と言って、前田の本体を一度預かり手入れを施す。手入れが終わると、薬研が口を開く。
「大将。さっきも言った通り、前田から大将に相談事があって俺も同伴させて貰った。どうか俺っちからも頼む!」
『えぇ!!そんな、頭なんて下げなくて良いよ!?二人の頼みごとなら勿論聞きますし!』
「本当ですか!!?」
キラキラと眼を輝かせる前田に私は頬を緩ませる。
こんなに頭を下げてまでする頼み事とは、余程大事な頼みごとなのだろう。
『はい。それで頼み事というのは』
薬研と前田は顔を見合わせ、コクンと頷き合う。
「実は、主君に開けて頂きたい"蔵"があるのです」
「ただその蔵は厳重な力で守られていて俺達では開けられないんだ」
『それは、私に開けられる物なの?』
と問いかけるが二人からいい返事は貰えなかった。