第3章 蔵
鶴丸を追い掛けようか迷った。
しかし今は手入れの途中でもう次の人達が来てしまっている。
今は手入れに専念しよう。鶴丸さんを探すのはそのあとだ。
そう一人で決意していると、山姥切が何か迷った表情をして言った。
「鶴丸は、悪い奴じゃない。ただ…」
『分かってます。あ、いや鶴丸さんに何があったのかは全然分かってないんですけど。大丈夫です、後で本人に会って聞いてくるつもりなので』
「鶴丸に会いに行くのか。あんなこと、言われて」
『勿論です。まぁ、ショックだったのは確かなんですけど。でもこのままにしておくのも嫌なので!!』
「そうか」
山姥切さんは眼を見開き驚き、一言呟いてまた部屋を出て行ってしまった。
『どうぞ御入り下さい!』
私は部屋の外に居た二人を呼ぶ。大柄な男性の方が先ず部屋に入って来て、その後ろから小さな男の子が隠れながら入ってくる。
大柄な男性はドカっと座布団の上に座った。
じっと見つめられ、一瞬たじろぐ。
『ええーと、では本体を出して頂いて。ひゃい!!?』
「いわとおし!!?」
気まずさから眼を背けると、その"いわとおし"と呼ばれた男性が私の顔を両手で挟んで前を向かせた。
そして近すぎない距離でまたじっと見つめられる。
金色の二つ瞳が、私を探る。
下にいるこんのすけもわたわたと慌てている。
見詰められたまま数十秒の間が空くと、いわとおしさんはニカッと笑った。
「うむ!どうやら主は悪い奴ではないようだな!!」
『……』
一人納得している人以外の三人は首を傾けた。
いわとおしさんはスッと顔から手を離し、そう思った理由を話す。
「急にすまなかったな!!俺の名は岩融!そして俺の後ろにいるのが今剣だ」
『岩融さんと今剣。わ、私はレンと言います!それで、今のは?』
「ガハハハハハハ!!今のは俺なりに主を見定めていただけのこと。
食事での場の雰囲気と言い、他の刀剣達の主に対する接し方。この本丸に来て僅か数日でこうも変わるとは思ってもいなかったからなぁ!!」
あー、朝の"あれ"も見られてた感じか。
確かに五月蝿かったと思うけども!!