第3章 蔵
『こんのすけ!?あ、はははは。皆さんお早う御座います。どうぞどうぞ、お料理頂いて下さい』
昨日と同様、皆の視線を集めてしまった廉は苦笑いをする。
皆の視線から逃れるため、そそくさと陸奥守さん達のいる席に向かった。
足元でにこやかに笑うこんのすけに、思わずツッコミそうになったがそれを抑える。
「主お早う御座います!!」
「よう…」
「お早う御座います主さん!あ、僕堀川国広と言います!」
『…おはようございます』
なんと昨日と同じ面子の他に、兼さんと堀川君が加わっていた。
そして空いている席は長谷部さんと兼さんの間。何故そこの席をあけた…
どうぞお座りください、とニコニコと笑い掛ける長谷部さんに引けなくなった私は静かにその席に座る。
『わ、美味しいそう!』
朝餉を前にした途端気まずさを忘れ、目の前の料理に目を輝かせた。
今日は焼き魚がメインの和朝食。
『いただきまーす!』
長谷部さん達も朝餉を食べ始める。
あー、美味しい。洋食も好きだけど、やっぱ和食って最高だー。
歌仙さん達の料理の腕が凄い。私も見習わなければ。
と、黙々と箸を進めていると長谷部さんに呼ばれ顔を上げる。
「主、お顔に米粒がついてますよ」
『え!?』
指摘された米粒を自分で取ろうとした瞬間、長谷部の手が顔に近付きひょいっと取られる。
『あ、アリガトウ…ゴザイマス』
「いえ」
先程のニコニコとした笑顔とはまた別の優しい笑顔に私は固まった。
「主と長谷部なんかあったのか?」
「あぁ?そうか?」
御手杵さん意外と鋭い。一方のたぬきさんは興味がなさそうだ。
大丈夫、緊張することはない。私は昨日長谷部さんと寝ただけ。
私は味噌汁を口に運ぶ。
「…おんしら、何かあったんか?」
『!!』
陸奥守さん!?そこ追及します!?
「ん?昨日主が俺の話を聞いてくれてな。その後…フっ…」
『ゲホッ…ゲホッ…ちょっ…ゴホっ…』
照れながら意味深な笑み浮かべる長谷部さんに、私は思い切り噎せた。
不思議なことにこの本丸に咲いていない筈の桜の花びらが散る。
私が噎せた事に驚いた兼さんが隣で背中を擦ってくれた。